20分
金曜。
久遠寺と時間で連帯した。
20分、と互いに宣言した。
目的地の一致じゃなくて、逃げ道の共有。
連帯の形はそれで足りる。
サーキットの整備、リアの空気圧を0.1下げた。
判断でも習慣でもない。
外界に対する礼儀に近い。
整備は路面への応答だ。
夕方、澪川に世界記録更新の要点を聞いた。
背泳ぎの肘の落とし方、と一言で返してきた。
夜、写真つきで見せる、と付け足した。
要約で足りる相手には、要約で返す。
楽な相手だ。
食堂で夕凪が、あったかいのとぬるいのどっちがいい、
と聞いてきた。
ぬるい、と返した。
声が震えなかった。
オレの側が変わったんじゃなく、
あの子が短さで話す相手に、こちらの中でなりつつある。
境界線が動いた。
ラウンジ、20分いた。
澪川の雑誌の話を10分だけ聞いた。
オレが要点を聞いた背泳ぎの肘、
写真通り。
数字と身体を、あの女は繋げて話す。
悪くない。
久遠寺は隣で20分黙って座ってた。
それで十分だった。