2キロ
測定日。
進入速度、全周で去年より2キロ上げた。
フロントが逃げる直前の音、湿ってない路面で聞こえる帯域を、
今日いくつか特定した。
数字を置いた。
夕方、シャワーの後で父の書類を引き出しから取り出した。
3枚目まで読んで、封筒に戻した。
全部読めば感情が動くと知っていた。
少しだけ、と刻んだのは、自分の閾値の探り方だ。
食堂で澪川に2キロ、と伝えた。
あの女は0.4秒縮めた、と返した。
数字の交換は、言葉の空隙を埋める。
信頼と効率は同じ回路の別の出力、
と昨日書いたが、それは合っている。
久遠寺には数字で3ループを聞いた。
10本中7本、3拍遅れ、と返してきた。
数字で聞ける相手は限られる。
あの女は含まれる。
夕凪が食堂で、お茶あったかいの残ってる、
と言ってきた。
声が震えなかった。
数字は分からないと自分で言った。
分からなくてもいい、と付け足したところが、
あの子の言葉の使い方だ。
七瀬がラウンジで全員の数字を復唱した。
記録帳係、と澪川が呼んだ。
オレは頷いただけ。
悪くない役だ。