便箋の一行目
十六時すぎ。
小雨の音が、アリーナの屋根で
ずっと細く続いていました。
きょうは打ち込みを四十本。
測定のつぎの日なので、
数よりも、一本ずつの手ごたえを
たしかめるつもりで打ちました。
指先にボールが当たる感じが、
きのうより、少しやわらかかったです。
夕食のあと、
部屋で、新しい便箋を出しました。
水曜日に五枚ぶんを送ったばかりなのに、
もう次の一枚目を考えています。
妹たちの返事は、早くても来週の船。
それを待ってから書けばいいのに、
書きたいことが
先にたまってしまうんです。
たとえば、測定で五本ふえたこと。
たとえば、食堂の筑前煮のこと。
それから、十一月の発表会のこと。
最後のひとつで、ペンが止まりました。
書いたら、きっと
妹たちは「お姉ちゃん出るの?」って
聞いてきます。
わたしは、まだ出るとも出ないとも
決めていないのに。
便箋には、きょうの日付だけ。
発表会のことは、書いていいんでしょうか?