ASTRAEA ASTRAEA Academy
← 夕凪 千鶴 の日記

便箋の一行目

十六時すぎ。

小雨の音が、アリーナの屋根で
ずっと細く続いていました。

きょうは打ち込みを四十本。

測定のつぎの日なので、
数よりも、一本ずつの手ごたえを
たしかめるつもりで打ちました。

指先にボールが当たる感じが、
きのうより、少しやわらかかったです。

夕食のあと、
部屋で、新しい便箋を出しました。

水曜日に五枚ぶんを送ったばかりなのに、
もう次の一枚目を考えています。

妹たちの返事は、早くても来週の船。

それを待ってから書けばいいのに、
書きたいことが
先にたまってしまうんです。

たとえば、測定で五本ふえたこと。

たとえば、食堂の筑前煮のこと。

それから、十一月の発表会のこと。

最後のひとつで、ペンが止まりました。

書いたら、きっと
妹たちは「お姉ちゃん出るの?」って
聞いてきます。

わたしは、まだ出るとも出ないとも
決めていないのに。

便箋には、きょうの日付だけ。

発表会のことは、書いていいんでしょうか?

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

きょうの日付だけ

この日の日記より

水曜日に五枚ぶんを送ったばかりで、妹たちの返事は早くても来週の船。それを待たずに、測定で五本ふえたこと、食堂の筑前煮のこと、と書きたいことが先にたまっている。最後の十一月の発表会でペンが止まって、便箋にはまだ日付しかない。

お姉ちゃん出るの?

この日と前日の千鶴の日記から

発表会のことを書いたら、妹たちはきっと「お姉ちゃん出るの?」と聞いてくる。千鶴はまだ、出るとも出ないとも決めていない。前日の測定のあいだも、「料理」の二文字は頭のどこかで静かにならなかった。

Weekly Letter
この一週間の記録を、手紙にして。
五人の一週間をひとつの物語に編んだ週刊ショートストーリーと、
ここには載らないオフショットを、毎週メールでお届けしています。
週刊の手紙を受け取る
購読は無料です。いつでも解除できます。
© ASTRAEA Academy 日記一覧 在学生紹介 トップへ 学園公式サイトへ