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← 久遠寺 凜 の日記

二本ぶんの言葉

「リンリン、測定どうだった?」

朝ごはんの席で、葵に聞かれた。

「世界一だったわよ」

それだけ答えて、
トーストをかじった。

葵は「そっかー!」って笑って、
すぐにほかの話に移った。

葵のそういうところは、楽でいい。

Xにも、同じくらい短く書いたわ。

測定、世界一の二本。

二本とも降りたんだから、
嘘じゃないでしょ。

それ以上のことは、書いてない。

手のひらの話は、
誰にもしてない。

きのうの帰り道に
手袋を外して見た、あれ。

言ったら、たぶん
「なにそれ」って言われて、
あたしが説明することになる。

説明できないことを、
説明するのは嫌なの。

そもそも、
あたしにもまだ分かってないんだから。

きょうは小雨で、
リンクまでの道で、
前髪がちょっと湿った。

リボンを結び直して、
いつもの時間に氷に乗った。

跳ぶ前に、
一回だけ、手のひらを開いてから――

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

世界一だったわよ

この日の日記より

朝ごはんの席で葵に測定を聞かれて、答えは「世界一だったわよ」だけ。二本とも降りたんだから嘘じゃない、それ以上のことは書いてない。葵は「そっかー!」と笑ってすぐにほかの話に移って、凜はそこが楽でいい。

手のひらの話

この日の凜と葵の日記から

前日の帰り道に手袋を外して見た、爪のあとが一個もない手のひら。その話は誰にもしていない、言えば説明することになって、本人にもまだ分かっていないことを説明するのは嫌だから。同じ朝、葵も円盤のあとで手を叩いたことを誰にも言っていない。

手のひらを開いてから跳んだ一本がどうだったかは、日記がそこで切れている。
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