二本ぶんの言葉
「リンリン、測定どうだった?」
朝ごはんの席で、葵に聞かれた。
「世界一だったわよ」
それだけ答えて、
トーストをかじった。
葵は「そっかー!」って笑って、
すぐにほかの話に移った。
葵のそういうところは、楽でいい。
Xにも、同じくらい短く書いたわ。
測定、世界一の二本。
二本とも降りたんだから、
嘘じゃないでしょ。
それ以上のことは、書いてない。
手のひらの話は、
誰にもしてない。
きのうの帰り道に
手袋を外して見た、あれ。
言ったら、たぶん
「なにそれ」って言われて、
あたしが説明することになる。
説明できないことを、
説明するのは嫌なの。
そもそも、
あたしにもまだ分かってないんだから。
きょうは小雨で、
リンクまでの道で、
前髪がちょっと湿った。
リボンを結び直して、
いつもの時間に氷に乗った。
跳ぶ前に、
一回だけ、手のひらを開いてから――