分厚い本
「ちーちゃん、それなに読んでるの?」
って聞いたら、
ちーちゃんが「ふぇっ」って言って、
本を胸のとこに抱えちゃった。
きょうは雨の土曜日。
外で走れないから、
図書塔で課題をやることにしたの。
まこるんに出された、数学のプリント。
一問目で、もう
お腹がすいてきた気がする。
気のせいだって分かってるけど、
数字がならんでると、
なんでかお腹が鳴りそうになるんだよね。
となりの机には、ちーちゃんがいた。
葵より先に来てて、
すっごく分厚い本を、
ずーっと真剣に読んでたの。
ページをめくるのが、
ものすごくゆっくりで、
ときどき、指で行をなぞってた。
だから気になって、
聞いちゃったんだけど。
「な、なんでもないですぅ……」
って言われた。
そっかー、なんでもないのかあ。
表紙は、ちーちゃんの腕で
ほとんど見えなかったけど、
角のとこに、
湯気の出てるお鍋の絵が
ちょっとだけ見えた気がする。
プリントは、三問目まで解いた。
あとの二問は、あしたの葵にまかせる。
ちーちゃんの本、
なんの本だったんだろう?