枕元の一冊
枕に頭をのせると、
耳のすぐ横に、本の角があたります。
きのう借りた、郷土料理の本です。
借りてから、一度も開いていません。
きのうの図書塔で、
もう半分くらいは読んでしまったので、
続きを開いてしまったら、
なにかを決めてしまいそうな気がして。
だから、枕元に置いたまま。
妹たちへの手紙は、
水曜日に島を出ました。
返事が来るとしたら、
早くても、次の水曜日の船です。
それまでは、
次の便箋も、日付だけのまま。
夕食は、今季はじめてのおでんでした。
大鍋のまわりが、
いつもよりずっとにぎやかで。
最後の大根は、
ルナちゃんが持っていってしまって、
葵ちゃんが、とても悲しそうな顔をしていたので、
わたしのお皿の大根を、
お箸で半分に割って、
葵ちゃんのお皿にのせました。
「ちーちゃん、天才……!」
と言われました。
大根を割っただけなのに。
菜めしの青い香りが、
まだ鼻の奥に残っています。
枕元の、まだ開いていない一冊。