当日のお楽しみ
ぐつぐつ、って音が、
テーブルのまんなかから聞こえてた。
この秋、最初のおでん。
大鍋がどんと置かれて、
みんなで取っていく形式。
最後の大根に、
あたしと葵の箸が同時に行ったの。
「葵が先だったよ!」
「あたしのほうが一瞬早かったわよ」
って言い合ってたら、
横からルナに持っていかれた。
……は?
別に、大根なんて
どうしても欲しかったわけじゃないし。
ただ、負けるのが嫌なだけよ。
で、みんな鍋のまわりに寄ったせいで、
あたしの席には真琴が座ってた。
どうでもいいけど。
そのあと、葵に聞かれた。
「リンリン、発表会、なにやるの?」
「当日のお楽しみよ」
って、にっこりしてあげた。
葵は「たのしみ〜!」って
ほんとに楽しみにしてる顔をしてた。
……で。
ここだけの話。
なんにも決めてないの。
世界一をやる、とは言った。
それは本気。
でも、世界一の「なに」を、
三分から五分で見せればいいのか、
まだ一ミリも決まってない。
スケートならいくらでも見せられるけど、
競技以外でもいい、って書いてあるのが、
いちばん厄介なのよね。
あたし、競技以外で、
何が世界一なんだろう?