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← 久遠寺 凜 の日記

頭の中の声

べつに、数えようと思って
跳んでたわけじゃないのよ。

夜明け前のリンクで、四十分。

三回転ループを8本跳んで、7本降りた。

残りの1本は、着氷のあとに
片足がステップアウトしただけ。
手はついてない。そこ、大事だから。

8本中7本。

まあ、世界一の朝としては悪くないわね。

気づいたのは、帰り道。

寄宿舎までの坂をのぼってたら、
頭の中で「なな」って声がしたの。

七本目を降りたときの声が、
まだ残ってたみたい。

それで思い出してみたら、
一本目から八本目まで、ぜんぶ、
踏み切る直前に、頭の中で数えてた。

いち。に。さん。

……なにそれ。

数えて跳んだって、
一本が二本になるわけでもないのに。

寄宿舎に着いたら、
真琴が廊下の窓のとこで、
手首に指を当ててじっとしてた。

脈を数えてるんだって。

「数えるの、好きね」って言ってやった。

言ってから、ちょっと黙っちゃった。

人のこと、言えないじゃない。

あしたは放課後のリンク。

数えないで跳ぶ――かどうかは、
跳んでから考えるわ。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

頭の中

この日の凜の日記より

数えようと決めて始めた練習ではないのに、踏み切る前には毎回数字があった。帰り道に残った「なな」から、凜は跳んでいる間の自分に気づく。本数をあとで記録するより先に、跳ぶ動きの中へ数える声が入っていた。

人のこと

この日の凜の日記より

真琴の脈には「数えるの、好きね」と言えてしまう。その直後、自分も頭の中で数えていた朝が引っかかる。黙った一瞬に、真琴へ向けた言葉が自分にも当たっている。

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