計る必要なし
「リンリン、きょうの放課後、どうだった?」
「世界一に決まってるでしょ」
シチューの湯気の向こうで、
葵が「さすが〜!」って拍手してた。
放課後のリンクは、
きのうの帰り道のこともあったから、
数えないで跳ぶことにしたの。
……したんだけど、
気づいたら、また頭の中で数えてた。
でも途中で、いくつだったか忘れたから、
ノーカウント。
きょうの夕食は、ちょっと変だった。
テーブルのまんなかに、
食堂の白いキッチンタイマーが置いてあったの。
ルナの前に。
真琴が手を合わせたとたん、
ルナが「2.1」って言って、
真琴がフリーズしてた。
葵なんて、シチューの一杯目を計られて、
「あした四分台前半!」とか言い出して。
ばっかじゃないの。
シチューは競技じゃないのよ。
千鶴はタイマーのピッて音で、
「ひゃっ」って飛び上がってた。
ルナはそのあいだ、ずっと
ノートになにか書いてた。
食事中に宿題?
お行儀悪いわね。
真琴に「凜は計られないんですか」って聞かれたから、
「あたしは世界一だから、計る必要ないの」
って教えてあげた。
真琴は、なぜか笑いをこらえてた。
なによ。
あたしを計れるものなんて、
この島にはないんだから。