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← 久遠寺 凜 の日記

正の字

カリ、カリ。

夕食のあいだ、ペンの音が、
ときどきテーブルの向こうから聞こえてた。

ルナのペン。

最初は、気にしてなかったのよ。

でも、あたしがしゃべると、鳴るの。

葵に朝のリンクのことを聞かれて、
「世界一よ」って言ったら、カリ。

千鶴に、放課後もリンクに行くのか聞かれて、
「世界一は休まないの」って言ったら、カリ。

さすがに、おかしいと思った。

身をのりだして、ルナのノートをのぞいたら。

真琴の行、葵の行、千鶴の行。
その下に、あたしの名前。

横に、正の字。

正がひとつと、あと二本。

……七。

「何を数えてんのよ!」

千鶴が「ひゃっ」って言った。それは、ごめん。

数えられるなんて、冗談じゃないわ。

あたしは、数える側なの。

だからタイマーを取り上げて、
「あんたも計られなさいよ」って言ってやった。

項目は真琴が決めて、ボタンは葵が押した。

食べたあと、いつ立つか。

ルナなんて、いつもいちばんに出ていくんだから、
一分もかからないと思ってた。

なのに、あいつ、立たないの。

「いつまで座ってんのよ」
「まだ計られてる」

……は?

じゃあ、あたしも立たない。

先に立ったら、負けだもの。

結局、ルナが立ったのは、
食堂の灯りが半分消えてから。
あたしは、そのあと。

部屋に戻ってから、
指を折って、きょう言ったのを思い出してみた。

たしかに、七回くらいは、言ってたかも。

……あたし、そんなに世界一って言ってる?

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

正の字

この日の凜の日記より

ルナの線が数えていたのは、凜の順位ではなく「世界一」と言った回数。自分の決まり文句が七回ぶんの印になって、凜は初めて多さを確かめる。部屋でも指を折り、数えられた言葉を自分で数え直している。

先に立ったら、負け

この日の凜の日記より

ルナを計り返すはずが、立たないルナを見て、凜は自分も座り続けると決めた。計測の項目に凜は入っていないのに、先に立つかどうかの勝負が始まっている。最後にルナのあとで立った順番まで、凜は覚えている。

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