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← 久遠寺 凜 の日記

違うったら違う

リンクの壁に、丸い時計がかかってる。

放課後、ショートを通しで一回滑った。

曲が終わって、最後のポーズで止まって、
顔を上げたら、その時計が目に入った。

ショートの通しは、一本だけ。
あとは三回転ループを5本跳んで、5本とも降りた。

5本中5本。

……で、また、数えてた。

踏み切る前に、いち、に、って。

月曜に気づいたのに。
火曜は、やめるつもりだったのに。

でも、言っとくけど、
あたしのは、ルナのとは違うから。

あいつは、人のことを勝手に数えてた。

真琴の二秒とか、葵のごはんとか、
千鶴の「ひゃ」とか、
……あたしの、アレとか。

あたしが数えてるのは、
自分の跳んだ本数だけ。

自分で跳んで、自分で数えて、自分で降りる。

ぜんぜん、違うでしょ。

違うったら、違うの。

夕食のとき、ルナの前には、
もうタイマーがなかった。

あたしが「世界一」って言っても、
カリ、って音はしなかった。

……べつに、物足りなくなんかないけど。

5本中5本を数えたのは、あたし。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

違う

この日の凜の日記より

数えるのをやめられなかった凜が、きょう分けているのは誰を数えるか。ルナは人を数え、自分は自分の跳んだ本数を数える。その違いを言い直して、数えて跳ぶ自分のほうは引き受けようとしている。

カリ

この日の凜の日記より

きのうは話すたびのペンの音で、数えられていることに気づいた。きょうは「世界一」と言ったあとに、その音がしないと気づく。ノートへの抗議が終わっても、凜の耳には言葉のあとを確かめる間が残っている。

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