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← 夕凪 千鶴 の日記

手のひらの大きさ

ひとつかみ、って、
どのくらいのことなんでしょう。

きょうは、午前の授業のあと、
アリーナで打ち込みを四十五本。

手のひらで打つたびに、
ぱん、と丸いかたちが残ります。

夕食は、オムライスでした。

きょうのテーブルには、
あの白いのが見当たりませんでした。

タイマーがないと、
「ひゃ」も出ませんでした。

夜、お布団の上で、
手のひらを丸めて、ひらいて、
また丸めてみました。

お鍋の前に立つと、
わたしはいつも、はかりを使いません。

ひとつかみ入れて、
お鍋のなかを見て、
もうすこし、と思ったら、もうすこし。

それで、ちゃんと、いつもの味になります。

でも、「ひとつかみ」と便箋に書いても、
妹の手は、わたしの手より小さいんです。

何度丸めても、
わたしの手のひとつかみは、
わたしの手のひとつかみのまま。

便箋は、きのうのまま、机の上。

分量の欄は、まだ白くて――

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

ひとつかみ

この日の千鶴の日記より

同じ「ひとつかみ」と書いても、妹の小さい手では入る量が変わる。千鶴の手には足りる言葉が、そのまま妹の手に渡せない。手を何度丸めても、二人の手の大きさの違いは埋まらない。

もうすこし

この日の千鶴の日記より

いつもの味は、最初のひとつかみだけで決まっていない。鍋を見て「もうすこし」と足すところまでが、千鶴の作り方になっている。便箋には、入れる量に加えて、その見ながら加減する手順も渡す必要がある。

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