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← 久遠寺 凜 の日記

白い玉

三分から、五分。

十一月の発表会で、
ひとりに渡される時間。

放課後のリンクから戻って、
部屋の机で、紙を一枚出した。

いちばん上に「世界一」って書いて、
その下に、なにをやるか書こうとしたら、
そこから先が出てこなかった。

丸めた。

もう一枚出して、
また「世界一」って書いた。

丸めた。

ゴミ箱のまわりが、白い玉だらけ。

夕方、葵がドアをノックしてきた。

「リンリンの競技以外、見に行ってもいい?」

「見学? お断り」

閉めた。

ドアの向こうで、葵がしばらく
立ってる気配がしてた。

断った理由?

べつに、ないわよ。

見せたくないから、見せないの。
あたしが決めることでしょ。

……ドアの内側で、白い玉がまたひとつ増えた。

寄宿舎の入口のほうから、
ずっと、変なにおいがしてくる。

銀杏よ。中庭の。

葵が、あれを食べるって騒いでた。

あんな臭い実を、よく食べる気になるわね。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

世界一

この日の凜の日記より

いちばん上の「世界一」は何度でも書けるのに、その下の、何をやるかが出てこない。三分から五分で見せるものを決めるには、その一語の先が要る。丸めた紙には、毎回同じところで止まる作業が重なっている。

見せたくない

この日の凜の日記より

葵を断った理由を、凜は説明せず、自分が決めることとしている。その一方で、日記には閉めたドアの内側で紙をもう一枚丸めたことを書く。見学には出さなかった、決まらずにいる机の様子がここには残る。

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