剥がす役
指先が、お昼になっても、まだ少し冷たかった。
夜明け前のリンクに、三十分。
開校記念日だろうと、関係ないの。
世界一は、記念日も休まない。
戻ってからは、部屋にこもってた。
紙を出して、「世界一」って書いて、丸める。
また出して、書いて、丸める。
十一時ごろ、ドアの外で
葵の足音が止まった。
ノックが二回。
あたしは、ちょうど一枚丸めたところで、
くしゃ、って音が、たぶん廊下まで聞こえた。
足音は、しばらくして、遠ざかっていった。
開けなかった。
十二時の食堂。
冷蔵庫の上の段の、紅白まんじゅうの箱。
「十日まで」って書いてある、あの貼り紙。
きょうが、その十日。
「剥がすの、あたしがやる」
職員さんが笑って、どうぞって。
角から、ぴりっと剥がした。
「開けるのはあたし。いい?」
葵が拍手して、千鶴が小さく拍手して、
真琴がちょっと遅れて拍手して、
ルナは、拍手しなかった。
でも、見てた。
剥がした貼り紙は、
まだ、パーカーのポケットに入ってる。