中身のない紙
部屋の床が、白い紙で埋まってる。
午後、ゴミ箱のまわりに転がってた白い玉を、
ぜんぶ拾って、ひとつずつ広げてみたの。
しわしわの紙を、床に並べて、
指で、のばして。
窓からの光が、晴れてきたところで、
紙のしわに、細い影ができてた。
並べ終わって、上から見下ろした。
世界一。
世界一。
世界一。
どの紙にも、いちばん上に「世界一」。
その下は、ぜんぶ白い。
一枚も、中身が書いてない。
……ウケるんだけど。
あたし、一週間かけて、
世界一って書く練習しかしてないじゃない。
字だけは、どんどん上手くなってる。
最後のほうの「界」なんて、ほぼ完璧。
三分から五分で見せる世界一の、
「なに」のところ。
まだ、一ミリも決まってない。
紙は、捨てなかった。
しわをのばしたまま重ねて、
机の引き出しにしまった。
あしたも、夜明け前のリンク。
跳んでから、また考えるわ。