一枚目の表
16本。
きょうは屋内の25mで、本数はそれだけです。
水曜は船が来る日なので、軽めにしてあります。
午後、寄宿舎の掲示板に、新しい紙が貼られていました。
土曜の十五時に、中庭で、秋の集い。
司会も挨拶もない会だそうです。
葵が、その紙の前で固まっていました。
夕食のあと、葵が「静かにする練習」を言い出したとき、
私の上着のポケットには、もう表が入っていました。
ゆうべの一行に、きょう書き足したものです。
十時二十分、バナナ一本。
授業のある日は、毎日。
土曜だけは、十四時におにぎり一個。
清書して、三つ折りにして、渡しました。
葵は両手で受け取って、
その場で、声に出して読みはじめました。
渡してから、気づきました。
あの表には、葵の名前しか書いていません。
時刻を先に決めればいい、と言い出したのは私なのに、
自分の時刻は、どこにも決めていない。
……っ、決める必要が、ないからです。
たぶん。
予行のことは、うまく書けません。
誰も口を開かないまま、
湯呑みの湯気だけが、細くなっていって。
凜が何か言いかけたところで、
葵のお腹が鳴りました。
気がついたら、私も笑っていました。
いつ笑いはじめたのかは、覚えていません。
表に書いた十四時は、
土曜の会の、ちょうど一時間前です。
夕食の鯵フライは、朝の船で届いた鯵だそうです。
寝る前になっても、
しじみのお味噌汁のあたたかさが、まだお腹に残っています。