先を越された
「最初のひと言は、あたしが取るから」
夕食の席で、そう言ってやった。
土曜に、中庭でお茶を飲む会があるんだって。
司会なし。挨拶なし。
それを読んだ葵が、
静かにする練習をしたいとか言い出したから、
ついでに宣言しておいたの。
誰も始めないなら、あたしが始めればいいだけでしょ。
開会のひと言なんて、いちばん目立つところじゃない。
夕食のあと、食堂の人から急須と湯呑みを借りて、予行。
千鶴がお茶を注いで、
全員、黙った。
それが、思ってたより長かったのよ。
誰も動かない。
真琴は湯呑みのふちを見てるし、
ルナは窓の外を見てるし。
頃合いね、と思って、息を吸って、
「それじゃ」
そこまで言ったところで、
葵のお腹が、鳴った。
あたしの「それじゃ」より、大きい音で。
全員、笑った。
食堂の奥の人まで、笑ってた。
言っとくけど、
あたしが笑ったのは、いちばん最後だから。
みんなが笑ってるあいだも、
あたしは開会役として、ちゃんと待ってたの。
……ほんの、ちょっとだけよ。待ったのは。
放課後のリンクでは、きょうも数えなかった。
三日目。
頭の中の声は、もうほとんど聞こえない。
そのかわり、着氷のたびに、あの空いたとこが来る。
最悪なのは、そこに、
葵のお腹の音が入ってきそうなこと。
あしたは、ひと言目の言い方を考えとく。
土曜は、絶対にあたしが先なんだから。