空の段
「夕凪さん、きのうの郵便、ちゃんと船に乗りましたよ」
朝、事務室の前で、職員の方にそう声をかけられました。
「あ、あの…あぃがとぉ、ござぃましゅ…」
最後のところで、また噛みました。
ラウンジの郵便棚の、わたしの段は、空になっていました。
何も入っていない段は、
思っていたより、奥が深く見えます。
午後の打ち込みは、四十五本でした。
返事が来るのは、早くても二週間後です。
船が向こうの港に着いて、
家に届いて、妹たちが読んで、
三人で書いて、また船に乗って——
と、指を折りかけたところで、
ボールが一つ、コートの隅まで転がっていきました。
数えるのをやめて、拾いに行きました。
晩ごはんは、鶏の唐揚げと豚汁でした。
葵ちゃんが、きょうは一回も鳴らなかったと、
とてもうれしそうに話していました。
真琴ちゃんは、そのあいだ、
すこしだけ眼鏡をなおしていました。
あしたも、空の段の前を通ってから、
アリーナへ行きます。