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← 久遠寺 凜 の日記

島にあるもの

しゃっ、しゃっ、て、エッジの音だけ。

夜明け前のリンクには、あたし以外、誰もいない。
高い窓はまだ暗くて、氷の白だけが浮いてる。

35分、滑った。
何本跳んだかは、数えてない。
数えないって、決めたの。

朝ごはんの前にラウンジを通ったら、掲示板に紙が一枚。
真琴の字。

本土に頼むなら、きょうの事務室まで、だって。

横で葵が「頼んであるもん」とか騒いでた。
何をよ。

あたしは言ってやった。

「島にあるもので足りるわよ」

だって、ほんとに足りてるもの。
窓辺には、もう四つ、吊るしてあるんだから。

部屋に戻って、カーテンレールの束を見た。

ローズマリー。四つとも、逆さまのまま。
葉の丸まりが、きのうより進んでる。
指でさわると、まだ、ちょっとしっとり。
三十一日までに、乾くかしら。

ただ、仮装のほうは、まだ何も無い。

島にあるもので足りる、って言ったのは、あたし。

足りるはずよ。
足りるのよ。

窓辺の四つの束と、まだ白紙の仮装。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

島にあるもので足りる

この日の日記より

葵が「頼んであるもん」と騒ぐ横で、凜は「島にあるもので足りるわよ」と言った。足りている証拠は、窓辺に吊るしたローズマリーの四つの束。ただ仮装のほうはまだ何も無くて、足りると言ったのはあたし、と凜は自分で書いている。最後は「足りるのよ」で押し切った。

乾くかしら

この日と前日の日記から

四つの束は逆さまのままで、葉の丸まりは前日より進んだ。前日、端の一つを外したときは茎がまだ少しやわらかく、乾ききっていなかった。この日もさわるとまだちょっとしっとりしていて、三十一日に間に合うかを凜は問いのまま置いた。

前日の夜、凜はその束を持って、自分の部屋のドアを内側から開けている。

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