引き出し
ぱらぱら、と、窓に小雨の音がしていました。
午後の打ち込みは、四十二本。
アリーナの屋根にも雨が当たっていて、
ボールの音と雨の音が、かわりばんこに聞こえました。
雨の音を聞いていると、
妹たちが小さかったころの手を思い出します。
雨の日は外で遊べないので、
ちいさい手が、わたしの膝のまわりに集まってきて、
何かして、何かして、と言うんです。
あのころ、わたしは何をしてあげていたんだっけ。
寮に戻って、手ぬぐいをしまってある引き出しを開けました。
古いのが、何枚か。
洗いざらして、やわらかくなったものです。
見て、閉めました。
晩ごはんのあと、もう一度開けて、
一枚だけ指でつまんで、また閉めました。
月曜に頼んだものは、まだ届いていません。
届くのは、あしたの船です。
届く前に手をつけるのは、
なんだか、ずるい気がして。
晩ごはんは、白いシチューでした。
みんな静かで、葵ちゃんが三回目のお皿を持って立ったとき、
真琴ちゃんの眼鏡が、ちょっとずれました。
とろりとしたシチューに、ロールパンがよく合いました。