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← 久遠寺 凜 の日記

最後の一枚

黒い画用紙。一枚。

南側の文具店の、画用紙の棚。
白と、水色と、黄色と、黒。
黒だけ、残り一枚だった。

お店の人が、「次の入荷は来週の水曜の船ね」って。

来週の水曜じゃ、三十一日に間に合わない。

だから、買ったの。最後の一枚。
あたしが来なかったら、誰かのものになってたかもしれない一枚。
あたしが来たんだから、あたしのものよ。当然。

午後は、フリーの通しを1本。
曲のはじめから終わりまで、止まらずに。
最後のポーズのとき、誰もいない客席のほうを見ちゃった。
……別に、いいでしょ。癖よ、癖。

夜、部屋で、机に画用紙を広げた。

最後の一枚、ってことは、失敗したら、おしまい。
やり直しのきかない一枚。

鉛筆で、うすく線を引いた。
円すいの形。つばの輪。
はさみを入れる前に、三回、頭の中で切ってみた。

それから、一回で切った。
のりしろを折って、とめて、つばにさしこんで。

できた。

とんがった、黒い帽子。

かぶって、鏡を見た。
ツインテールが、帽子の両わきから、ちょうどいい具合に出た。

……似合うに決まってるじゃない。

ねえ、一回でできちゃうのって、
実は、すごいことなんじゃないの?

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

最後の一枚

この日と前日の日記から

南側の文具店の画用紙の棚で、黒だけが残り一枚。次の入荷は来週の水曜の船で、三十一日に間に合わないから買った。あたしが来たんだから、あたしのもの。前日、欲しい色は黒で「黒、あるかしら」と書いていた。

一回で切った

この日の日記より

やり直しのきかない一枚なので、鉛筆でうすく円すいとつばの輪を引き、はさみを入れる前に三回、頭の中で切った。それから一回で切って、とんがった黒い帽子ができた。かぶるとツインテールが帽子の両わきからちょうどいい具合に出て、似合うに決まってる、と凜は書いている。

前日、クローゼットの中は氷の上の服ばっかりだった。

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