いたずらの番
二十時。
じゃんけんで、回る順番が決まりました。
真琴ちゃん、わたし、葵ちゃん、凜ちゃん、ルナちゃん。
二番目。
心の準備をする時間が、ほとんどありませんでした。
午前は、軽い素振りだけにしました。
小雨が、昼すぎには曇りに変わりました。
十九時の夕食はミートローフで、
そのあとラウンジで、職員さんが作ってくださったかぼちゃのプリンをいただきました。
窓に、紙のかぼちゃが並んでいました。
それから、回りました。
真琴ちゃんの戸口では、四人で声をそろえて、口上を言いました。
わたしが直した口上を、四人で。
自分の声が、三人の声にまざって、聞こえなくなりました。
それが、とても、ありがたかったです。
真琴ちゃんがくれたのは、線の引いてある白い紙。
いちばん上に「千鶴」と。
わたしの番。
手ぬぐいで頬かむりをして、戸口に立ちました。
祖母が畑に出るときの、あの巻き方です。
お手玉を、一つずつ。
葵ちゃんが「小豆だ!」と言って、
ルナちゃんは、てのひらで二回、重さを量っていました。
葵ちゃんの戸口では、芋けんぴの小袋を。
凜ちゃんの戸口では、ローズマリーの束を。
最後が、ルナちゃんの戸口でした。
ドアの前の床に、灯りが一つ、置いてありました。
四角い、白い灯り。
「お迎えの灯り、ですねぇ……」
思わず言ったら、ルナちゃんが「車庫のだ。返す」と。
渡すものは、ない、とも。
だから、いたずらの番が来ました。
葵ちゃんは、すぐ、芋けんぴをルナちゃんのポケットに入れました。
凜ちゃんと真琴ちゃんは、しませんでした。
わたしの番。
何も考えていなかったのに、手が動きました。
頬かむりの手ぬぐいをほどいて、
ルナちゃんの頭に、巻きました。
あごの下ではなく、頭のうしろで結んで。
ルナちゃんは、外しませんでした。
「……Bene(よし)」
生まれてはじめての、本当のいたずらでした。
あの灯りは、
わたしが水曜に言いかけたことを、聞いていたからでしょうか?