空いた場所
指先に、まだローズマリーのにおいが残ってる。
ゆうべ、四つの束を外したときの。
洗っても、ちょっと残ってる。しつこいハーブね。
夕方のリンクで35分。
晴れて、途中から曇った。
高い窓の明るさが、滑ってるうちに変わっていった。
戻ってきて、窓辺を見た。
カーテンレール。
束を吊るしてた場所が、四つとも空いてる。
ゆうべは、それを見て、ちょっと変な感じがした。
きょうは、もう慣れた。……慣れたことにしておく。
机の上に、千鶴のお手玉。
手ぬぐいの、小さいの。にぎると、中で小豆が動く。
それを持って、カーテンレールのとこに行った。
束を吊るしてた紐が、一本だけ残ってた。
そこに、お手玉を、引っかけてみた。
ぶらん、って揺れた。
……ふん。悪くないじゃない。
ほかの三つは、空いたまま。
何を吊るすかなんて、決めてないわよ。
真琴の白い紙は、机の上。
上の端に「凜」ってあるだけ。
中は、まだ何も書いてない。
書くことなんて、そのうち、いくらでもあるんだから。
窓辺に、ひとつだけ揺れるお手玉。