ポイの角度
19時ちょうど、漁港の空で一発目が鳴った。
オレたちは浜通りにいた。
浴衣は動きにくい服だと思っていたが、
歩幅を先に決めてしまえば、案外いける。
金魚すくいの屋台の前で、
久遠寺が勝負すると言い出した。
受けた。
ポイは紙の道具だ。
水に立てて入れると、そこから破れる。
だから先に角度を決めた。
水面と、ほとんど平行。
動かすのは手首じゃなく、肘から先。
9匹。
紙は最後まで持った。
掬った金魚は、
ぜんぶ屋台の水槽に帰した。
店の主人は変な顔をしていたが、
オレがやりたいのは掬うほうで、
飼うほうじゃない。
寮に水槽はないし、
世話は片手間でやるものじゃない。
金魚は水槽で、オレはサーキットで。
それでいい。