先に行かせる
ラウンジの窓から見える海が、
きょうは灰色だった。
曇り。風は南寄り。
数字にすると、たいした風ではない。
掲示の時刻表。
第2週の便の丸印。
その下に、事務室の人が
オレの名前を書き入れた。
それだけのことだ。
本土の合同走行会。
順位はつかない。走るだけの会だ。
部屋で目録を作った。
マシン一台。
タイヤ一セットと予備が二本。
工具箱。ヘルメット。替えのグローブ。
人と荷物は、同じ船には乗らない。
荷は水曜の供給船で先に出す。
オレは日曜の臨時便で追う。
向こうで先に待っているのは、
オレではなく車のほうになる。
順番としては、正しい。
車は自分で歩かないし、
オレは荷台では眠れない。
廊下で夕凪に呼び止められた。
持っていくものはあるか、と。
いや、いい。工具は自分で選ぶ。
断ってから、
断り方が短すぎたかと少し考えた。
考えたところで、
言い直す言葉は出てこない。
夜、車庫で目録を読み返した。
足りない道具はひとつもない。
足りないのは、日にちだけだ。