いつも通りの十八周
最後、という言葉は使わない。
使うと、走りが変わる。
きょうはタイヤを一セット、
使い切るところまでと決めていた。
十八周。
四周めで温まり、
九周めがいちばん粘り、
十四周を過ぎたあたりから
リアが少しずつ遅れて出はじめる。
いつもと同じ順番で
グリップが減っていった。
減り方に驚きが無いのは、
いい仕事の証拠だ。
十八周めの最終コーナー。
ゴムは終わっていたのに、
オレの手にはまだ、
路面からの返事が届いていた。
Bene(よし).
ピットに戻して、
使い切ったほうを外し、積んだ。
明日、これは船に乗る。
そのあとの三日、オレは走らない。
三日というのは、
数えれば短い。
車庫の電気を消して、ドアを閉めた。
いつも通りの一日だ。
それ以上は書かない。