空いた車庫
「あとはこっちでやっておくから」
桟橋で、船の人にそう言われた。
オレの手から台車の取っ手が離れて、
それで終わりだった。
荷札が一枚足りず、
工具箱だけ手書きになった。
インクの色が違うだけで、
中身は何も変わらない。
昼を過ぎて、車庫へ戻った。
床のオイルの跡が、
車のあった場所を四角く残している。
壁の棚も半分は空だ。
しばらく立って、見ていた。
手が余る。
この感覚は初めてだ。
競技の日にも待つ時間はある。
だがその時、手はハンドルの形をしている。
いまは何の形でもない。
指を握って開いてみたが、
それで収まるものでもなかった。
夜は鯖の味噌煮だった。
澪川が段取りの紙を
ポケットに入れたまま食べていた。
もう用済みのはずだが、
本人が持っていたいなら、それでいい。
明日から三日、オレは走らない。
何をするかは、明日決める。