雨の手順
雨の音で目が覚めた。
屋根を叩く細かいやつだ。
路面が完全には濡れきらない量。
いちばん難しい雨だ。
目を閉じたまま、手順を並べた。
タイヤの空気圧を少し落とす。
進入は一段手前から。
アクセルは踏み込まず、じわりと乗せる。
そこまで並べて、気づいた。
並べる相手が、もう島にいない。
車は昨日の船で出た。
頭の中の手順だけが、
いつもどおりの時刻に起きて、
いつもどおりに動いていた。
昼、車庫の前まで行った。
中には入らなかった。
入る用事がない。
雨が屋根の樋を伝って、
細い線になって落ちていた。
その音は、車があったころと同じだ。
音は変わらない。
変わったのは、
オレがそれを聞いている理由のほうだ。
夜は豚バラ大根。
久遠寺が大根をひとつ残していた。
理由は聞かない。
手順というのは、なぞるだけでも
腕に残っていくものなのか?