ASTRAEA ASTRAEA Academy
← ルナ・御影・ヴィスコンティ の日記

二度見た

ボストンバッグひとつ。

中身は着替えと、手帳と、
グローブの替えだけ。

工具はもう先に行っている。
だから荷は軽い。

これだけ軽い出発は初めてだ。

昼の便。曇りから晴れに変わった。

桟橋に四人が来た。

七瀬がいちばん大きな声を出していた。
何を言っていたかは、
風で半分しか聞こえない。

夕凪は何かを渡そうとして、
渡さずに引っ込めた。

澪川は時刻を確かめていた。
出航の時刻だ。

久遠寺は腕を組んで、
最後まで何も言わなかった。

オレも何も言わなかった。

言うべき言葉が特に無い。
一週間で戻る。

タラップを上がって、
デッキの手すりのところに立った。

島は見ない、と決めていた。

見ると、走る前の集中が濁る。
理由はそれだけだ。

一度、見た。

桟橋の四人がまだ立っていた。
手を振っているのは七瀬だけだった。

前を向いて、五分数えた。

もう一度、見た。

桟橋はもう小さくて、
誰がどれかは分からない。

それでも、四つ在った。

決めたことを一日で二度破ったのは、
オレの記録では初めてだ。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

四人が来た

この日の日記より

桟橋には四人。葵がいちばん大きな声を出し、千鶴は何かを渡そうとして引っ込め、真琴は出航の時刻を確かめ、凜は腕を組んで最後まで何も言わなかった。ルナも何も言わなかった、言うべき言葉が特に無いから。

島は見ない

この日の日記より

デッキの手すりに立って、島は見ないと決めていた。見ると走る前の集中が濁るから。一度見て、前を向いて五分数えて、もう一度見た。

四人 一度め 四つ 五分数えて デッキから見た桟橋

一日で二度破った

この日の日記より

ボストンバッグひとつの、いちばん軽い出発。工具はもう先に行っていて、一週間で戻る。決めたことを一日で二度破ったのは、ルナの記録では初めて。

Weekly Letter
この一週間の記録を、手紙にして。
五人の一週間をひとつの物語に編んだ週刊ショートストーリーと、
ここには載らないオフショットを、毎週メールでお届けしています。
週刊の手紙を受け取る
購読は無料です。いつでも解除できます。
© ASTRAEA Academy 日記一覧 在学生紹介 公式サイトへ