十一台の音
十四時ちょうどに、会場に入った。
コースを歩いた。一周1.1km。
十四分かかった。
歩幅で路面の継ぎ目を数えていった。
第二コーナーの入口に、
アスファルトの色が変わる帯がある。
そこだけ古い。
雨のあと、乾きが遅い場所だ。
覚えておく。
パドックには十一台が入っていた。
一台ずつエンジンをかけている。
暖機だけの音だ。
十一の音が、同じ場所で鳴っている。
島では、鳴っているのはオレの一台だけだ。
あれは音というより、部屋のようなものだった。
ここでは、自分の音を
自分の耳で探さないといけない。
隣の車がブリッピングを入れると、
オレの車の回転が
それに合わせて聞こえてくる。
錯覚だ。分かっている。
耳が勝手に、
となりの音を自分のものとして拾う。
明日はこれの中で走る。
Bene(よし)。
面白いことになった。
十一台のうち、
オレの音がどれかを
オレが分からなくなる日は来ない。
そう言い切っておく。