誰も数えていない
朝の会場は、まだ影が長かった。
路面が冷えている。
一本目は探る周になる。
合同走行会の一日目。
24周した。
順位はつかない。
タイムも掲示されない。
そういう走行会だ。
知って来ている。
十一台が順番にコースへ出て、
思い思いに走って、戻ってくる。
決められているのは
出る順と、時間の枠だけだ。
十七周目に、いい形が出た。
古い舗装の帯のところだ。
リアが流れはじめる位置を、
半車身ぶん奥へ持っていけた。
その一周のあと、
ピットに戻って、
グローブを外して、
それで終わりだった。
誰も何も言わない。
当たり前だ。
みんな自分の車を見ている。
それから気づいた。
きょう何周したかを知っているのは、
オレだけだ。
数えていたのはオレで、
数えろと言われたわけでもない。
島でも同じだった。
同じだったのに、
ここで初めて気づいた。
島には、少なくとも
戻る食卓があったからだと思う。
Basta(もういい)。
走行会は明日もある。
24という数字を、
誰にも渡さないまま持って帰るのか。