一周だけ、他人の線
肩の付け根が、きょうは早く重くなった。
昨日より周回は少ないのに。
二日目。19周。
通り雨で路面が濡れて、
午前は一度止まった。
昼から乾いて、そこから走った。
九周目だ。
前を走っていた白い車が、
第三コーナーで妙な入り方をした。
一拍遅く、深く入って、
出口で綺麗に伸びていった。
見えたので、次の周でなぞった。
同じ位置でブレーキを残し、
同じ角度で入れた。
伸びなかった。
車が違う。重さも違う。
タイヤの残りも違う。
それは分かっている。
問題は、その次の周だ。
自分の入り方が、
一瞬、思い出せなかった。
いつもの位置に戻したはずなのに、
戻した感じがしない。
十九周目まで走って、
最後まで戻らなかった。
他人の線を一周なぞると、
自分の線が一本ぶん薄くなる。
そういうことがあるらしい。
車を降りて、
路面に自分の跡を探した。
濡れたあとの路面は、
何も残していなかった。
明日は撤収だ。
走る枠はもう無い。
だから、この一周は