空の車庫
車の無い運転手というのは、
たぶん間抜けな見た目だと思う。
昼の臨時便で島に着いた。
桟橋に四人が居た。
七瀬が大きい声を出し、
久遠寺がその横で腕を組み、
夕凪が荷物に手を伸ばしてきて、
澪川が便の時刻を確かめていた。
先週の見送りと同じ並びだ。
順番だけが逆になっている。
荷はバッグひとつだった。
渡すほどの重さでもないので、
夕凪の手には何も乗せなかった。
「明日は車が来ないのか」と
澪川に聞かれた。
水曜だ、と答えた。
そのあと、一人で車庫まで歩いた。
坂を上がって、
戸の前で鍵を出して、
戸を引いた。
中は空だった。
知っている。オレが空にした。
床にオイルの染みだけが残っている。
夏のうちに落としそこねたやつだ。
しばらく立って、
それから戸を閉めた。
閉める音は、
中に車がある時と同じだった。
同じでない気がしていたのに、同じだった。
夜の食堂で椀が五つ並んでいた。
栗ごはんだった。
一週間ぶりに、
自分の音がしない場所で食べた。
十一台の中では、
自分の音を探し続けていた。
ここでは探さなくていい。
……いや。
ここには最初から、
探すほどの音が無い。
そのどちらなのかは、
水曜に車が着けば分かる。
Bene(よし)。
明日から二日、走らない日が続く。