月と軍手
じじ、という音がしなかった。
テラスの電球は、
いつも小さく鳴っている。
今夜は静かだった。
切れていたからだ。
替えの球は、次の船待ちらしい。
だから今夜の月見は、
月の明かりだけでやった。
団子は、夕凪が
顔を皿に寄せながら
三つずつ配ってくれた。
その皿の横に、
音もなく何かが置かれた。
オレの軍手だった。
きれいに畳んであった。
「洗い終わったの。返す」
久遠寺は、それだけ言って、
自分の団子を食べ始めた。
オレは受け取って、
その場で両手にはめて、
はめたまま団子を取った。
礼は言っていない。
言う空気でも
なかったと思う。
軍手は、洗剤と、
知らない部屋の匂いがした。
じき、車庫の匂いに戻る。
食べ終わって、
月がどのくらい明るいのか、
目で見積もろうとして——
やめた。
今夜のこれは、
計らなくていい明るさだ。
ところで、軍手をはめた手で
取る団子は、
なぜ少しうまいんだろうな。