境目の4周
雨上がりのサーキットは、
路面がまだ半分だけ黒い。
乾いたところと
濡れているところの境目が、
コースに地図みたいに
残っている。
きょうは4周だけ走った。
タイムは取らない。
感覚合わせの4周だ。
濡れた境目を越えるたび、
タイヤの声が変わる。
高くなって、低くなって、
また高くなる。
4周で、声の変わり目を
ぜんぶ覚えた。
車庫に戻って、
ノートに一行だけ書いた。
きのうのフル点検と、
記録会の日の7つの点検。
その差分について、
書けることは
一行しかなかった。
中身は、ここにも書かない。
一行で足りることを
長く書くと、
嘘が混ざるからだ。
ノートを閉じて、
ふと思った。
この一行を読み返すのは、
たぶん、ずっと先の——
いや。今日はここまでだ。