備考欄
昼すぎ、サーキットの上を
通り雨が一本、横切っていった。
止んだあとの路面は、
空の色を映して光っていた。
測定は十四時。
乾くのを待つ時間はなかった。
定常円、20本。
振り返し、18本成功。
九月の測定は17本だった。
濡れた路面は、
乾いた路面と、
つかむ場所がちがう。
最初の3本で、
タイヤがどこで路面を離すかを探した。
4本目から、合わせた。
失敗した2本は、
どちらも前半だった。
数字を用紙に書いた。
名前、日付、種目、本数。
いちばん下に、備考という欄がある。
路面が濡れていた、と書くことはできた。
書かなかった。
濡れていたのは、
オレだけの路面じゃない。
あの時間、あの場所の路面だ。
それを書いても、
18という数は変わらない。
提出して、車庫に戻った。
空欄のまま出した、備考欄。