一行
雨の日は、工具の日だ。
走れない日を、
何もしない日にはしない。
朝から、部屋の床に布を広げて、
工具を全部並べた。
レンチ、ソケット、トルクレンチ、
ドライバー、空気圧計。
大きいものから順に、
一本ずつ拭いて、
刃先と口の減りを見る。
ソケットのひとつに、
小さな欠けがあった。
次の船で、替えを頼む。
手入れが終わってから、ノートを開いた。
木曜の測定の、振り返し18本。
あの感触を、書いておこうと思った。
濡れた路面で、
うしろのタイヤが離れる場所が、
乾いた日より手前にあった。
4本目から、それに合わせた。
書けたのは、そういう一行だった。
もっと書くことがある気がしていたが、
一行で終わった。
足りないとは、思わなかった。
窓の外は、
夕方になっても小雨のままだった。
あしたは、路面が乾くだろうか?