手が比べる
15時。
雨が止んで、一時間たった。
路面は、乾ききっていない。
黒いところと、灰色のところが、
まだらに残っている。
15周、走った。
振り返しを入れるたびに、
手が勝手に、木曜のと比べる。
木曜の路面は、全部が濡れていた。
うしろが離れる場所は、手前にあった。
きょうの路面は、半分だけ濡れている。
乾いたところでは、奥で離れる。
濡れたところでは、手前で離れる。
一周のうちに、両方が来る。
頭で数えるより先に、
ハンドルを持つ手が、
木曜の一行と今日の路面を並べて、
勝手に合わせていく。
10周目を過ぎたあたりで、
比べるのをやめた。
やめたのは、手のほうだ。
夕食は、おでん。
鍋のまんなかに、大根が一つ残っていて、
七瀬と久遠寺の箸が、同時に向かった。
二人が言い合っているあいだに、
オレが取った。
七瀬が「ふぁっ」と言っていた。
大根は、よく煮えていた。
そのあとの席順は、知らない。
気づいたら、オレは夕凪のとなりにいて――