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← 七瀬 葵 の日記

二行目の白いとこ

きょうの空は、雲がひとつもなかった。

トラックのまんなかで上を見たら、
青いのしかなくて、
ちょっとくらってした。

その空の下で、
ハードルを八台並べて、六本。

一台目の前で、いっつも脚がうずうずする。
八台目を越えると、もう一本やりたくなる。

六本でやめたの、えらいと思う。

夕ごはんは、豚の生姜焼き。

キャベツの千切りが山もりで、
タレのしみたお肉を
キャベツでくるんで食べるのが、
葵のいちばん好きな食べかた。

もぐもぐしながら、みんなに白状した。

「あのね、発表会の表、
まだ一行目の『食べる』だけなの」

まこるんは眼鏡を押さえて、
「……一行目で、止まってるんですか」って。

リンリンは「あんたらしいじゃない」って笑ってた。

で、ついでに聞いてみたの。

「ルナっぴの競技以外って、ほんとにないの?」

先週は「ない」って、すぐ返ってきたのに。

きょうのルナっぴは、なにも言わなかった。

生姜焼きをさいごまで食べて、
お味噌汁を飲んで、
すっと席を立っちゃった。

怒ったのかなって思ったら、
ちーちゃんが小さい声で
「ルナちゃん、たぶん、いつもどおり……」って。

たしかに、ルナっぴは
いつも食べ終わったらすぐ行っちゃう。

でも、きょうの「なにも言わない」は、
先週の「ない」と、
なんかちがう気がしたんだよね。

部屋にもどって、表をひらいた。

一行目、「食べる」。

二行目、まだ白いとこ。

あしたの夜はシチューだって!
二行目は、あしたのお楽しみ。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

食べる

この日と前日の葵の日記より

「食べる」は、十一月の発表会で競技以外に何をやるかを書き出した最初の候補。食べる話なら次々に出てくる葵も、表の二行目では止まっている。まだ白いところを「あしたのお楽しみ」と呼んでいる。

なにも言わない

この日の葵の日記より

「ない」なら、競技以外のものは無いと返事を受け取れる。きょうはその返事がなく、葵には先週と同じ答えかどうかも分からない。食べ終わって席を立つ順番がいつもどおりでも、聞いた側には違いが残った。

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