見学の予約
「くさっ! ……あ、でもこれ、食べられるやつ!」
夕方、寄宿舎の入口で、
おっきい声が出ちゃった。
中庭の銀杏が、この秋はじめて、
実を落としたんだって。
曇ってて風もないのに、
においだけ、入口までちゃんと来てた。
炒って、塩ふって、
ぷちってするやつ。
おなかが、ぐうって返事した。
それからね、あしたの予約をしに回ったの。
土曜の朝は授業がないから、
みんなが競技じゃないときに何してるか、
見せてもらう予定。
まず、まこるん。
まこるんは、土曜の朝は図書塔で予習なんだって。
「葵もそこ行く! 見学!」って言ったら、
眼鏡の奥で、目がまるくなってた。
でも、「静かに、ですよ」って。
これは、いいよってこと。
つぎ、ちーちゃん。
ちーちゃんは、「えっ、あ、あの……」って
何回か言いかけてから、
「は、はい……」って言ってくれた。
つぎ、ルナっぴ。
「勝手にしろ」
これも、いいよってこと。
さいご、リンリン。
部屋のドアをノックしたら、
ちょっとだけ開いて、
「見学? お断り」
って、ばたん。
ドアの前でしばらく立ってたけど、
もう開かなかった。
リンリンは、きっと
なにか、すごいのを隠してるんだと思う。
部屋にもどって、表の二行目を見た。
まだ白い。
そのとなりに、あしたの順番だけ、
ちっちゃく書いておいた。
三つの予約と、ひとつの閉まったドア。