四つの場所
スパナって、思ってたより重い。
きょうは開校記念日で、授業がお休み。
だから朝から、みんなの競技じゃない時間を、
順番に見せてもらいに行った。
一つめ、図書塔。
まこるんの隣に座って、
まこるんが予習してるのを見てた。
ノートに、きれいな字がどんどん並んでいく。
ページをめくる音が、しゅっ、しゅっ、って。
……それで、気づいたら、
まこるんに肩をとんとんされてた。
「三分です」
葵、三分で寝てたんだって。
二つめ、車庫。
ルナっぴは、マシンの横にしゃがんで、
なにかのネジをはずしてた。
葵が入っていっても、なにも言わない。
でも、手だけ、うしろに出してきた。
あ、これ、道具ちょうだいってことだ、と思って、
工具箱のいちばん上のを渡した。
受け取って、使って、また手が出てくる。
次のを渡す。
それを、何回もやった。
どれを渡せばいいか、なんでか分かったんだよね。
ルナっぴの手と、マシンを見てたら。
スパナが重かったのは、そのとき。
三つめ、ちーちゃんのお部屋。
ノックしたら、ちーちゃんが
「ひゃっ、ど、どうぞ……」って。
机の上に、分厚い本が一冊、
なにかの上に、でんって置いてあった。
「それなあに?」って聞いたら、
「こ、これは、重しです……」
重し。
なにを押さえてるのかは、教えてくれなかった。
四つめ、リンリンのお部屋。
ノックしたけど、きょうもドアは開かなかった。
中から、紙がくしゃってなる音が、
一回だけ聞こえた。
十二時、食堂の前に行ったら、
みんなが、ほとんど同じタイミングで来た。
まこるんは図書塔から、ルナっぴは車庫から、
ちーちゃんは寄宿舎から、
リンリンも、どこかから。
特別メニューは、お赤飯と、鶏の照り焼きと、
茶碗蒸しと、紅白なますと、おすましと、
紅白まんじゅう!
冷蔵庫の貼り紙は、リンリンがはがして、
開けるのもあたし、って言い張ってた。
夜、部屋で表を広げた。
二行目、やっぱり白いまま。
四つも見せてもらったのに、
なにを書けばいいのか、分からなかった。
紅白まんじゅうは、白いほうを最後に残しておいた。
さいごのひとくちは、
あんこがいちばんぎっしりのとこだった。