鍵
雲が低くて、サーキットの向こうの海と、
空の境目が見えなかった。
16周。
曇りの日は、路面の温度が上がらない。
一周目と十六周目で、ほとんど変わらない。
変わらない路面では、
こっちの誤差だけが、そのまま見える。
走り終えて車庫に戻ると、
入口に七瀬がいた。
「あした、ルナっぴの見学していい?」
何を見るのか、とは言わなかった。
「勝手にしろ」と答えた。
七瀬は「やったー」と言って、
次のところへ走っていった。
寄宿舎の入口が、臭かった。
銀杏だそうだ。
七瀬は、あれを食べる気でいる。
土曜の朝は、マシンの手入れをする。
いつもの手順だ。
車庫の鍵は、開けておく。