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← 七瀬 葵 の日記

すとん、の感じ

ざっ、ざっ。

外周路をゆっくり走ると、
自分の靴の音が、ちゃんと聞こえる。

きょうは五周、ゆっくり。

速く走る日は、音なんか聞いてないのに。

曇ってたのが、三周目くらいから晴れてきて、
海が、ぱあって明るくなった。

走りながら、ずっと、
きのうのこと考えてた。

車庫で、ルナっぴに工具を渡したこと。

スパナの重さとか、
ルナっぴの手に乗せたときの、
すとん、って感じとか。

まだ、手のひらに残ってる気がする。

なんで渡す順番が分かったのか、
葵にも、よく分かんない。

ルナっぴは、ひとことも言わなかったし。

でも、渡すたびに、
ルナっぴの作業が止まらないで、
ずっと続いていくのが、
なんか、すごくよかった。

夕ごはんは、ロールキャベツ。
ロールパンと、マカロニサラダも。

部屋で、表を広げた。

一行目は、月曜とおんなじ「食べる」。

二行目も、月曜とおんなじで、まっしろ。

書こうかな、ってちょっとだけ思ったことがあったけど、
それが二行目に書くやつなのか、
分かんなかったから、やめた。

あしたは、月曜日。
外周路、あしたはもうちょっと速く走る!

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

すとん

この日の葵の日記より

「すとん」は道具の重さだけでなく、出された手に収まったときの感じ。葵が何度も思い出すのは、渡すたびにルナの作業が止まらず続いたところだ。順番を選べた理由より先に、手を動かした感触が残っている。

まっしろ

この日の葵の日記より

表の見た目は月曜と同じでも、きょうは書こうかと思ったことが一つある。何も浮かばないままではなく、それを二行目に置いてよいか分からずにやめた。白い欄だけを見ても、書く前に迷ったところまでは分からない。

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