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← 七瀬 葵 の日記

静かなとこの作戦

くぅ〜、きゅるる。

午前の図書塔で、
葵のお腹が鳴った。

みんな静かに本を読んでて、
ページをめくる音しかしない時間に。

その部屋でいちばん大きい音が、
葵のお腹だった。

となりの席のまこるんのペンが、
一瞬だけ、ぴたって止まった。

それから、何もなかったみたいに、
また動きはじめた。

見ちゃった。
止まったとこ、見ちゃった。

えへへ、って笑いそうになったけど、
図書塔だから、それもがまんした。

午後はトラックで、400mを3本。

走りながら、ずっと作戦を考えてた。
静かなとこで、お腹を鳴らさない作戦。

一本目で思いついたのは、
授業の前に、なにか食べておく。

二本目で思いついたのは、
朝ごはんを、もっと食べる。

三本目で思いついたのは、
おにぎりを、ポケットに入れておく。

……ぜんぶ、食べる作戦だった。

夜ごはんは鮭のちゃんちゃん焼き!
味噌とバターのとこをごはんにのせたら、うまっ!

食べてるあいだは、
お腹、いっこも鳴らないのにね。

ねえ、お腹って、
なんでわざわざ静かなとこを選んで鳴るの?

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

ぜんぶ、食べる作戦

この日の日記より

午後の400mを3本、走りながら一本ごとに作戦をひとつ考えた。授業の前に食べる、朝ごはんをもっと食べる、おにぎりをポケットに入れておく。お腹を鳴らさないための作戦が、三つとも食べるほうにしか向かなかった。

止まったとこ

この日の葵・真琴・凜の日記から

図書塔で葵のお腹が鳴ったとき、となりのまこるんのペンが一瞬止まって、また動いた。真琴の日記だと、聞こえなかったふりをしようと思ったのはペンが止まったあとで、その遅れを「一拍」と書いている。葵が見ちゃったのは、その止まったとこ。

同じ部屋で、凜も聞こえないふりをしていた。

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