いちばん大きい音
掲示板の紙は、まだ画鋲の頭がぴかぴかだった。
午後の練習のあと、
寄宿舎に戻る廊下で見つけたの。
「十月十七日(土)十五時 中庭 秋の集い
司会・挨拶はありません」
一回目は、ふーん、って読んだ。
二回目で、ふぁっ⁉ ってなった。
司会がいない。挨拶もない。
ってことは、誰もしゃべらない。
ってことは、しーんとしてる。
しーんとしてるとこで、
いちばん鳴るのは、葵のお腹だよ。
紙の前で、ちょっと青ざめた。
夜ごはんは、鯵フライ!
けさの船で来たばっかりの鯵なんだって。
衣がさくさくで、しっぽまで食べた。うまっ!
ごちそうさまのあとで、みんなに言った。
「静かにする練習、しよう」
まこるんが、ポケットから紙を出した。
葵の補食の表。土曜は、二時におにぎり一個。
食堂の人に急須と湯呑みを借りて、
五人で、ひとつのテーブルに座った。
ちーちゃんが、順番にお茶をついでくれて、
それから、だれもしゃべらなくなった。
しーん。
ほんとに、しーん。
湯呑みを両手で持って、底に指をそえて、
お腹にむかって、心のなかで「しーっ」て言ってた。
リンリンが「それじゃ」って言いかけた、
ちょうどそのとき。
くぅ〜。
……鳴った。
いちばん静かなとこで、いちばん大きく。
みんなが、いっせいに笑った。
台所の奥で、食堂の人まで笑ってた。
葵も、笑っちゃった。
笑いながら、お茶をひとくち飲んだ。
あったかかった。
練習としては、たぶん失敗。
なのに、テーブルのまわりが、
さっきよりずっとやわらかかった。
あしたは、表のとおり十時二十分にバナナ。
忘れないように、枕もとに表を置いて寝る!