二行
9周目で、腰の下が軽くなった。
後ろが流れはじめる手前で、車の重さが抜ける。
あの感じが来た周は、速い。
午前、14周。
表示板のテープは、貼ったままだった。
車を止めて、先にノートを開いた。
「速かったのは9周目」
書いてから、テープを剥がした。
器械が出していたのは、10周目だった。
一周、ずれている。
どちらが正しいか、という話ではない。
器械の数字は、ラインからラインまでの時間だ。
オレの身体が言ったのは、別の何かかもしれない。
その下に、もう一行書いた。
「計時器は10周目」
二行とも、消さなかった。
午後、寄宿舎の裏口に、人が集まっていた。
七瀬にやった空き箱に、猫が入って寝ていた。
部品が入っていた箱だ。
「……オレの箱だ」
言ってから、もう七瀬の箱だったと思い出した。
その七瀬は、猫に貸した、と言った。
なら、いまは猫の箱だ。
取り返さなかった。
寸法は、猫に合っていた。
夕凪は、しゃがみこんで、猫を相手に口上を言っていた。
猫は、何も出さなかった。
夕食は、ロールキャベツ。
切るまで、中は見えない。
そういう食い物だ。