ASTRAEA ASTRAEA Academy
← ルナ・御影・ヴィスコンティ の日記

二行

9周目で、腰の下が軽くなった。

後ろが流れはじめる手前で、車の重さが抜ける。
あの感じが来た周は、速い。

午前、14周。
表示板のテープは、貼ったままだった。

車を止めて、先にノートを開いた。

「速かったのは9周目」

書いてから、テープを剥がした。

器械が出していたのは、10周目だった。

一周、ずれている。

どちらが正しいか、という話ではない。
器械の数字は、ラインからラインまでの時間だ。
オレの身体が言ったのは、別の何かかもしれない。

その下に、もう一行書いた。

「計時器は10周目」

二行とも、消さなかった。

午後、寄宿舎の裏口に、人が集まっていた。

七瀬にやった空き箱に、猫が入って寝ていた。
部品が入っていた箱だ。

「……オレの箱だ」

言ってから、もう七瀬の箱だったと思い出した。
その七瀬は、猫に貸した、と言った。

なら、いまは猫の箱だ。

取り返さなかった。
寸法は、猫に合っていた。

夕凪は、しゃがみこんで、猫を相手に口上を言っていた。
猫は、何も出さなかった。

夕食は、ロールキャベツ。

切るまで、中は見えない。
そういう食い物だ。

Reading Notes 読み解き この日までの日記から

二行

この日の日記より

身体が捉えた軽さと、ラインからラインまでの最短の時間は、同じ周を選ばなかった。先に感覚を書いたので、数字を見たあともその答えが残る。片方を消さず二行にしたのは、同じものを測っていたとはまだ決めないためだ。

オレの箱

この日の日記より

部品が入っていた記憶から、自分の箱と口にした。すぐに七瀬へ渡したことを思い出し、いまは猫が借りていると受け取る。元の持ち主だったことは、その場で取り返す理由にはならなかった。

Weekly Letter
この一週間の記録を、手紙にして。
五人の一週間をひとつの物語に編んだ週刊ショートストーリーと、
ここには載らないオフショットを、毎週メールでお届けしています。
週刊の手紙を受け取る
購読は無料です。いつでも解除できます。
© ASTRAEA Academy 日記一覧 在学生紹介 トップへ 学園公式サイトへ