ゼロ
14周。
曇りで、路面の温度はずっと低いままだった。
タイヤが温まるのに、いつもより周回が要った。
昼休み、寄宿舎の郵便棚に、物がいっぺんに並んでいた。
船が遅れたらしい。
七瀬の箱。夕凪の封筒と袋。
オレの棚には、何もない。
頼んでいないから、来ない。
七瀬が夕凪の袋を見て、大きい声を出していた。
夕食の皿は鰤。
三十一日の時間が決まった。二十時から。
それから、澪川が表の見出しを読んで、
「一人一つ」の数え方が割れていたと分かった。
部屋ごとに一つか、来る四人それぞれに一つか。
久遠寺が何か言いかけて、黙った。
オレは言った。
「ゼロは、四倍してもゼロだ」
オレの渡すものは、ない。
どっちの数え方でも、ない。
それで、話は四人それぞれに、で落ち着いた。
その前、時間の話のときに、夕凪が言いかけてやめた。
「灯りが、あれば……」
誰も拾わなかった。夕凪も、続けなかった。
オレは、聞いていた。
何も言わなかった。
灯り。