作業灯
作業灯。
車庫の棚の、いちばん下の段にある。
四角くて、取っ手がついていて、コードを巻いてある。
夜に車の下をのぞくときに使う、白い灯りだ。
きょうは走らない木曜。
午前の通り雨で、車庫の前のコンクリートが濡れていた。
昼すぎに晴れたので、シャッターを上げて、床を乾かした。
乾くのを待つあいだ、棚を見ていた。
作業灯を一つ、下ろした。
点くことは、日曜に確かめてある。
きょうは、それを持って帰った。
棚の横の貸し出しの紙に、名前と日付を書いた。
返すのは、日曜。
誰にも頼まれていない。
誰にも言っていない。
寄宿舎の廊下では、誰にも会わなかった。
部屋の床に置いて、一度だけ点けた。
白い光が、床に四角く広がった。
ドアの下の隙間から、廊下のほうへ少し漏れた。
消した。
なぜ持って帰ったのか、と聞かれたら、
答えは一つしかない。
水曜の夕食で、夕凪が「灯りが、あれば」と言った。
それだけだ。
それ以上の理由は、ない。
夕食はハヤシライス。
作業灯は、床に置いたままにしてある。
三十一日まで、ここに置く。