頭の上の布
「お菓子をくださらないと、いたずらを、させていただきます」
四人の声が、オレの部屋のドアの前でそろった。
最後の部屋だった。
順番はラウンジのじゃんけんで決まった。
澪川、夕凪、七瀬、久遠寺、オレ。
ドアの前の床には、作業灯を一つ置いておいた。
二十時になる前に、点けておいた。
白い光が、廊下の床に広がっていた。
夕凪が「お迎えの、灯りですねぇ」と言った。
「車庫のだ。返す」
それから、言った。
渡すものは、ない。
それで、いたずらを受ける番が来た。
七瀬が、オレの上着のポケットに、何かを入れた。
小さな袋だった。
久遠寺は、いたずらは子どもっぽいからしない、と言った。
澪川も、しなかった。
夕凪が、頭に巻いていた手ぬぐいをほどいた。
それを、オレの頭に巻いた。
結び目が、うしろに来た。
外せと言われていないし、
外すなとも言われていない。
外さなかった。
それから、オレは言った。「Bene(よし)」
午前は、12周、走った。
小雨のあと、路面は昼までに乾いた。
もらったものは、四つ。
澪川の白い紙。夕凪のお手玉。七瀬の芋けんぴ。久遠寺のローズマリー。
それと、ポケットの袋と、頭の布。
オレが渡したものは、ない。
お開きのあと部屋に戻っても、布は頭に巻いたままだった。
これを外さない理由を、
どう書けばいいんだ?