椅子の背
返した。
作業灯は、朝のうちに車庫の棚へ戻した。
いちばん下の段の、もとの場所。
貸し出しの紙に、返した日を書いた。
それから、15周、走った。
晴れのち曇り。
きょうは、9周目と10周目を確かめなかった。
確かめないで走ると、出口のことは考えなかった。
返していないものが、一つある。
夕凪の手ぬぐい。
ゆうべ、寝る前に外した。
頭に巻いたままでは、寝られない。
外して、椅子の背に掛けた。
朝、見たら、まだ掛かっていた。
当たり前だ。オレが掛けたんだから。
返すなら、夕凪の部屋へ持っていけばいい。
同じ寄宿舎の中だ。
持っていかなかった。
理由は、まだ書けない。
朝、上着のポケットに手を入れたら、小さな袋が出てきた。
七瀬の芋けんぴ。
戸口でもらったのとは、別の一つ。
いたずらで入れられたほうだ。
机の上に、七瀬の袋が二つ並んだ。
澪川の白い紙は、何も書かないまま、その横にある。
あすは、表示板の前で、9周目と10周目をもう一度確かめる。